◆乃南アサさんの作品の感想文
このサイトの管理人ひろみんが読んだ作品について、ネタバレも時々しつつ 率直に感じたことを書いています。ミステリのマニアではないので、 素人の視点での稚拙な内容になっています。

Amazonで購入出来ます ひったくりを繰り返し、ついには刃物で人を傷つけてバッグを奪って逃げた翔人。 トラック運転手を脅してたどり着いた山奥の集落で怪我をしていた老婆に助け、 なりゆきから彼女の家に居候することになる。
世捨て人のような翔人が人の優しさ、人生を歩む上ですべきこと、 避けられないことを村の人々に教わって変化していく様子はとても心あたたまります。 最初の翔人があまりにもひどいせいでしょう。ラストシーンは何度も何度も読み返しました。
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Amazonで購入出来ます 新潮社の「波」に2年間、24回にわたって連載された、その時刻にまつわるエピソード集。 おそらくそのほとんどが乃南さんの実体験から来ているものと思うので、ある意味エッセイ集とも いえるのではないかと思います。 自分を取り巻く大勢の人間、一人一人がその時間を必死に生きているということを改めて感じさせてくれる作品です。
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Amazonで購入出来ます 戦後の混乱で兄弟を次々と失い、妹・君子を守る為に殺人を犯した次郎。 刑務所の中で出会った備前焼が次郎の人生を切り開き、女優になった君子、 兄に次いで陶芸作家としての才能を開花させた満男、皆で幸せに暮らせる日が来ると思われたが・・・。
運命に翻弄されてあがき続ける兄弟。家族のつながりとは何かを考えさせられますが、 狂気とも思える次郎の青磁への執着は私にはやや理解に苦しむ面があり、 無条件で援助を惜しまない君子が痛々しく感じました。 また結局姉の昭子は後年は出てこないままで、なんとも消化不良という感じがあります。 それでも上下巻にわたって描かれたこの兄弟の壮絶な人生は、 差はあれどもしかしたらこの時代を生きた人たち皆に共通したものなのかもしれない・・と思いました。
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femaleに収録

中学受験に向けて勉強に励む真吾は、同級生の森島の自宅で一緒に勉強するようになった。 森島の母の若さと色気にすっかりまいってしまい、全く勉強が進まなくなってしまったが・・・
収録されたアンソロジーの帯に「闇の中で花開く5つの官能」とあるので、一応官能系に分類されるんでしょうかねえ。 これって、要するに同級生(森島という女の子は真吾のことを彼氏と思ってたみたいですけど)のオカンに からかわれた&遊ばれたけど、その親子が去ってからは頑張れましたよ〜ということなんでしょうか? 私の理解力が低すぎるのか、お話が終わった時はえ?と一瞬ポカンとしてしまいました。
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恋愛小説に収録

背の高い女と低い男、女のほうが年上で、同棲して数年が経過。この先どうなるのか女は不安に思い、 男は考えてはいるのだが口に出さないので女は追いつめられた気分になっている。 日々の会話も、少しのコミュニケーションの不足ゆえにかかみ合わない・・・。
タイトル通りのアンバランスに思える2人が、崩壊寸前かと思われた時にちょっとしたタイミングで またスムーズな関係に戻ります。乃南さんのことだから何か起こるんだろうと思わせて、 なんだかとても笑える、そしてほっとするラスト。
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Amazonで購入出来ます 「凍える牙」から始まる音道貴子シリーズの4冊目です。 今回は短編集で「小説新潮」に掲載された4編が収録されています。
3編までを私は既に読んでいたのでそれなりに思い出しながら読んでいったのですが、 乃南さんの短編によく出てくる「痛い人」というのとはまた違った、いわゆる 「常識はずれな人」がこの音道さんシリーズにはよく登場すると思います。 もちろん単に常識はずれなのではなく悲しい事情があったりもするのですが。 音道さんが鮮やかに事件を解決していくのですが、恋人の昴一との関係もそのまま 良い感じで継続しているようでそこここに彼も登場しますし、 [木綿の部屋]ではタッキーこと滝沢刑事も久々にたっぷり楽しめます。 タッキーファンはお見逃しなく、というセールスポイントを書いて今回は終わります(笑)
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Amazonで購入出来ます 「女へん」を用いた漢字の意味を乃南さんご自身の周囲の人や出来事にあてはめ、 そのエピソードと乃南さんの意見を綴ったエッセイ集です。
乃南さんのエッセイというと直近では[チカラビト]ですが、過去に[好きだけど嫌い] [ダメージ]と、ぶつぶつの女王(勝手に命名)と呼ばせて欲しくなるような 女の実態をミステリーやホラーでなく実話として綴ったものもあるので、 今回もちょっと覚悟が必要でした(汗)
漢字をテーマにしているということで、私は漢字が嫌いではない人だからというのも あるのですが、改めてその字の持つ意味を知ることができてとても楽しかったし、 世の中本当に人の数だけ人生があって考え方があるなあと改めて感じました。 女であることを普段は意識しないで暮らしている私ですが、これからも社会生活で 困らない程度に(笑)漢字の勉強をしつつ、女らしくというよりは自分らしく 生きていきたいなと思いました。
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Amazonで購入出来ます 私が名作と信じてやまない「風紋」の続編。分厚い上下巻からなる大作だと思います。 買ってすぐに待ちきれず休日2日をつぶして読みました。
「風紋」で母を殺害された真裕子は大学を卒業後社会に出、様々な経験を通じて 成長しつつもやはり7年前の事件を引きずり続けているのですが、 それはもう前作でも描かれていた真裕子の性格上のこと、とも思えます。 が、加害者である松永の妻とその息子、娘のその後のこと、そしてこのお話の中で進む 彼らのその後には、正直言って「重いなあ」と思いました。重すぎて 読み終わったときにほっとしたくらいで。
真裕子と建部が近しくなるタイミングも、なぜこのお話の中でなければならなかったの? というわがままな疑問も私は持ちました。このお話が嫌いなのではなく、乃南さんの作品を もっと読んでいきたい、追いかけていきたいと思うきっかけになった「風紋」を 大事に思っているからこそ、その続編はもっともっとという期待をしていました。 十分ではあったのですがほんのちょっとだけ不満です。
次にまた続編があるかどうかはわかりませんが、ハッピーエンドとまではいかずとも みんなが幸せになれば・・・などと望んでしまいます。
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Amazonで購入出来ます 新潮社のケータイ文庫で2002年に配信された作品で、現在は読んでいないので わかりませんが、この時に私が使っていたドコモでは配信がされなかったため、 このためだけに携帯をauに買い替えて平日の毎朝の配信を楽しみにしていました。
ファンだ私。と酔っていたのもつかの間、突然終わらせたと感じるような 多少強引なラストに持っていき、配信が終了したかと思うと余韻を味わう暇も与えてもらえず、 単行本化されてしまいました。そのショックでこの作品をどうのと文句を言うつもりは ないのですが(いや言ってるかも)。
「あなた」を愛する、愛されるべきと決めた女は、その男に生身ではない体になって つきまとい、男に関わる女に危害を加え、現実の自分がなし得ない事をしようとした結果、 自分自身を消耗させてしまいます。割合初期からドロドロっぽいので、まとめて読むと非常に 疲れるし後味も爽やかではないと思いますが、ドロドロのお話を心行くまでとおっしゃる方は 是非。(・・・といっても私はこのお話に出てくる女達が嫌いではありません)
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Amazonで購入出来ます [未練] 忙しいながらも自由で気楽な生活を送る音道貴子に、安曇の店で知り合った男性との 新たな関係の予感や、行きつけのカレー屋の店主に嫌がらせをする男の存在など、 未練をキーワードにした出来事が起こる。
このお話は、前作の「鎖」よりも前のできごとのようで、貴子は「彼氏」という存在がおらず、 そういうものを持つ生活を模索している状況のようです。 おかま(という表現をしていいのかどうか・・・の安曇さんが再登場。 以前彼女(彼?)からプレゼントされた携帯電話も活躍します。人は皆、様々なことに 未練を抱きながら生きていくのだということを、貴子の周囲に起こった事件で実感するお話。

[立川古物商殺人事件] 立川市の古物商が殺され、たまたま店に居合わせたと思われる古物商の元妻、 彼女が再婚先でもうけた幼い娘が巻き添えを食った。貴子は初動捜査にあたり後の捜査にも 加わる。個性的な刑事・島本と組み犯人を追いつめてゆくが・・・。
音道シリーズの短篇にしては珍しく、典型的な殺人事件から始まるなぁと思いながら 読みました。しかし島本刑事という新しいキャラクターが登場し、彼の家庭の事情なども 垣間見、また進展しない捜査にいらいらしつつどうなることやらと思っていたら、 なんとこのお話では事件は未解決のまま終末を迎えてしまうのです。 (ネタバレですね)
貴子も捜査チームから元の機動捜査隊に戻ることになってしまいます。 やっぱり乃南さんに「典型的」という言葉は似合わないんですね。

[山背吹く] 長い休暇をとり、東北の旅館に嫁いでいる友人・真弓の元に遊びに来た貴子。 特にすることもなく、旅館の仕事を手伝ったりしながらのんびりと時間をやり過ごしていた。 孤独と不安にさいなまれる日々の中で、自身が警察の人間であることを意識する事件に またも遭遇することになる。
巻末にある初出の年月からすると、「鎖」よりも前かなぁと思わせるのですが、 内容はどう考えても「鎖」以降じゃないのかなという感じです。 長期の休暇をとっているという点も、貴子が深く傷ついているという点も。 いつ書かれたものであろうとそれはどうでもいいことなのですが、真弓の息子・洋が 保育園に立てこもった覚醒剤中毒の男の人質になり、それを「落伍者」的な存在の男が 助けたことによって、貴子がまた東京に戻る決心をするくだりは、とても穏やかな気持ちに させられます。

[聖夜まで] クリスマスも近づいた冬の日、公園で遊んでいた託児所の子供の一人が、 保母が目を離したすきに砂場で残酷で異常な殺され方をした。 現場にいた犯人らしき少年は託児所に預けられている幼女の兄で、 その兄妹の母は貴子の職場の先輩・知世であった。やがて、知世が我が子への 虐待をはたらいていたことがわかり、貴子は昂一のすすめに従い知世の元を訪ねる。
お・・・重いお話でした。切ないとか悲しいとか、そういう生半可なものではなく。 幼児虐待がテーマではありますが、夫婦のありかたにも話は及んでいたと思います。
全ての元凶のようにも思われる、貴子の先輩の知世という女性。 彼女は自らの命を絶つことによって全てをリセットしましたが、あとに残された子供は どうなるのでしょうか。ここまでとことん書くのは、乃南さんだからなのでしょうか。
最後に、知世の夫が貴子に歩み寄ってきたことがせめてもの救いかもしれません。 でももっと悲惨な状況におかれている家庭はおそらく実在するのだろうと思います。 私もクリスマスになると、このお話を思い出してしまいそうです。

[よいお年を] 暮れの喧騒の中、怪我をした父にかわって実家の用事をこなす貴子。 母と買い物に出た先で酔っ払いが暴れている場に遭遇し、貴子と同じ立場の刑事である という女性が対抗するも、反撃されたところを助ける。
非常に長さは短いんですが、印象に残るお話でした。貴子はどうしてこんなに 冷静でいられるのか改めて不思議に思いますが、自分自身やその立場を よくわきまえているからこそなのでしょう。そしてそんな貴子を産んだ、 間違いなく彼女に似たのだと思わせる母との、憎まれ口を叩きながらのやりとり。 どこの母娘にもありそうな平和な情景にほっとさせられました。

[殺人者] 立川古物商殺人事件を今も追いつづける島本刑事。大晦日になっても事件は解決しなかった。 そして変わらず眠りつづける妻の元を訪ねる。
これもまたとても短く、あっという間に終わってしまいますが、印象深いです。 新キャラ?の島本刑事の大晦日を描いていますが、貴子も少しだけ登場し昨年 (「花散る頃の殺人」に収録されている[茶碗酒]参照)は泊まりだった、と さりげなくタッキーと交わした新年の祝い酒のことを匂わせます。
島本刑事は好転しない事件と自らの状況に疲れていたのでしょうが、妻が意識が ないながらも意思表示をしたともとれる「息をする」という行為にはっとします。 乃南さんのお話に出てくる刑事さんは、とても愛情深い人が多いように思います。 一部をのぞいて(笑)
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Amazonで購入出来ます 表紙にお相撲さんのイラストがふんだんに描かれた「相撲エッセイ」と 名づけられたこの本。乃南さんのファンでなかったら、お相撲には全く無縁で かつ興味もない私が手にとることは一生なかったでしょう。 どこかのホームページに、乃南さんが相撲マニアであるようなことが書かれていたような 気がしましたが、私はこの本で初めてそれを知りました。
毎日新聞日曜版に一年にわたって連載されていたというこのエッセイ。 読んでみるとなるほど乃南さんは、相撲や力士をとりまく様々な人々、 または相撲の歴史に至るまでを相撲好きの偏った意見ではなく、ごく一般の人間にも 大きくうなずけるような書き方でくどくなく、かといって物足りなさを残すことなく、 ほどよく解説してくれています。

これで私も相撲好きに!なんて世の中甘くはありませんが、相撲用語の由来から星誕期関、 魁皇関のお話、土俵の土のお話などよくぞここまでという感想に尽きます。冒頭で 日本相撲協会の時津風理事長が「本書は相撲の早わかり教本です」と書かれていますが、 まさにその通り。乃南さんの著書のコーナーだけでなく「相撲」コーナーにもこの本を 並べる書店ができることを祈ります。
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Amazonで購入出来ます 昭和39年の東京オリンピック前夜、「俺のことは忘れてくれていい」という電話を最後に 挙式目前の婚約者・勝が陶子の前から消息を断った。ある殺人事件の容疑者として 捜索される勝の潔白を信じて彼を必死に探す陶子と、復讐を誓って同じく勝を捜す、 刑事で、殺人事件の被害者の父・・・。

これは、そう昔のことではなくとも少なくとも現代の話ではありません。 私は東京オリンピックの年にはまだ生まれていなかったし。
とても厚い本で、基本的に厚みのある本は後回しにしてしまう私がためらうことなく ページをめくっていけたのは、優しい色の表紙と「涙」というタイトルにひかれたから だと思います。我ながら単純。
読み終わって思ったのは、陶子の婚約者であった勝の人生があまりにも悲しすぎるな ということです。こんなにやりきれない人生を送ることを強いられた彼と、その彼と 一緒に生きていくことが叶わなかった陶子を思うとまた悲しくなりました。 幸せというものが何なのかは私にはよくわかりませんが、たくさん涙を流した人ほど云々 というのがまんざら嘘でもないのかな、と思えました。
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Amazonで購入出来ます 都内で起こった占い師とその信者を含む4人の殺人事件の捜査にかり出された音道貴子。 相棒の警部補・星野はまさに「税金泥棒」ともいえる悪徳刑事の見本のような男だった。 貴子と同じく離婚経験者である彼に迫られ、付き合っている昂一の存在を明かし断ると 態度を豹変させた。
殺人犯が被害者から奪ったと思われる通帳で現金を引き出しに向かった銀行の退職者 をあたっているとき、星野の独断によって単独行動をとることになった貴子は、 星野と行動していたときにも会った過去の事件の被害者に会う。そこから貴子の 恐ろしい数日間が始まることに・・・。

いやぁ・・・この本はその分厚さのせいで、入手だけはしていたのですが やたらと長期間手元で放置されていた一冊です。なにしろ、分厚い本は苦手ですから。 でもあちこちでその評判やあらすじなどを聞いていくうち、むくむくと意欲が。 ちょうど時間もあったので一気に読んでしまいました。
最初は貴子と星野との確執で正直「うーん ちょっと退屈かな」と思っていたのですが、 貴子の身に予想外のことが起こってからは、勢いと「次どうなるんだッ次はッ!!」 という欲ばかりが先に立ち、かの滝沢刑事も登場したので一緒になって応援し、 貴子が殴られたときには自分も痛いような気になり(ネタバレなのかしら)。
常に貴子の心の支えになっていた昂一という「彼氏」の存在も新鮮だったし、 「凍える牙」とはまったく印象の違う音道貴子という女性が描かれていました。 とてもとても長いお話でしたが、乃南さんの、音道さんのファンである ということをのぞいても、十二分に楽しめるお話だったと思います。
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