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◆乃南アサさんの作品の感想文
このサイトの管理人ひろみんが読んだ作品について、ネタバレも時々しつつ
率直に感じたことを書いています。ミステリのマニアではないので、
素人の視点での稚拙な内容になっています。
本の帯に「12の人生と12の旅と」と書かれている通り、それぞれの女性が
それぞれに縁のある土地に旅をして、そこでそれぞれの人生にとっての
今までのこと、あるいはこれからのことを見出してゆくお話が収録されています。
乃南さんの短篇集というと、毒のある「イッちゃっている女性」が描かれていたり 恐ろしい心理サスペンスだったりと、いかにもミステリー作家な(いや、ミステリー 作家なのだと思いますが)ものが多いように思います。 でもこれはミステリー色のものはありません。 単に旅紀行風になっているわけでなくきちんと小説になっていて、 しかも旅の部分にも手抜きがないように思われます。私がこの中で 行ったことがある町はほんの少しですが、あぁそういえば そんな感じだったっけ・・・と思わせる表現があり嬉しかったです。 乃南さんの毒っぽい小説が好きな方も、音道シリーズが好きな方も、 ちょっと手を休めてこちらに浮気してみてください。すんなり読めて、 しかも印象深く心も洗ってくれるお話ばかりです。 ▲タイトル一覧にもどる
この本のあとがきで乃南さんご本人が言われるところの「ぶつぶつ」を
まとめたのだそう、エッセイ集というやつです。この本よりも少し前に発売された
「ダメージ」よりも、口調はそう変化がないけれど、少しキツいな〜と
感じさせるのはやはり「ぶつぶつ」だからでしょうか?(笑) 女性として生まれて女性のいいところも悪いところもまるで、もう全て 見限ってしまった!という風にも感じる雰囲気がぷんぷんで、 ここまで思い切って書くんだなぁ、ファンとか意識しないのかなぁ・・と 痛いところをつかれて「むむ」としながらもどんどん読み進めてしまう、 なんだか乃南さんの術中にはまってしまいそうな私です(汗) ▲タイトル一覧にもどる
1章〜4章と終章の大きく5つに分けて語りかけるように構成された
エッセイとも言いがたい、帯から引用すれば「あなたと著者の心のダイアローグ」
なんだそうです。無理にジャンル分けをする必要もないので、あえてそんな感じの
「読み物」とだけ表現しておきます。乃南さんと私でも10年の年齢差があるのですが、おそらくこの本は大体20代の前半から 半ばにかけての、複雑なお年頃の女性たちに向けての応援であり現実指南書であり、 乃南さんなりの経験談であったりという印象が私にはあります。 初めて読むときの年齢、また読み返すときの年齢、これを書いた乃南さんの年齢に 達したときによって、きっとそのたびに様々な感想を抱き、その先の自分の人生や 幸福に対する考え方を見つめなおすきっかけを作ってくれることと思います。 ▲タイトル一覧にもどる
◆躯(からだ)※旧漢字のためIMEで出ませんでした。
[臍(へそ)]
へそ出しルックをしたいがために、形の悪い自分のへそを整形したいという娘の
未菜子に付き添い美容整形の門をくぐった愛子は、やがて自らも若返りのために
整形手術を繰り返し、長女の千春までもが整形手術を受けることとなります。
一向に家族の変化に気づかない夫・父親を女たちはやがて軽蔑するようになりますが・・・
てっきり、整形を繰り返したあげくにとんでもない目にあう・・というような パターンなのかなと思っていたのですが、そうではなかったので驚きました。 このお話のようにお父さんがあるとき突然に家族を家族であると認識できなくなるほどに 変化があるとは思いませんが、美容整形が否定されないこの時代に相応しいテーマで、 手術を受けたいと願う人間の心理もよくわかるし、うまいなぁ。としみじみ 感心させられました。 [血流] 女性の膝とその裏側に性欲を感じる文哉は、電車の中で見知らぬ女性の膝の裏に 自分の膝を触れさせてひとときの快楽を得ていました。膝と膝ということから、 女性たちの反応が鈍かったことで文哉の行動は徐々に大胆になってゆき、 やがて警察に逮捕される騒ぎになってしまいます。それを知った妻の礼子は冷たく、 家庭の雰囲気も悪化していきます。それでもまだ懲りない文哉は 新たな欲望のはけ口を求めようとしますが・・・ 「全身の血が駆け巡る」ことが文哉の快感なのでしょうが、なんとも彼のご都合主義 というのか、自分のことしか考えていない姿勢に読んでいていらいらする思いが しました。世の痴漢といわれる皆さんを軽蔑はしないし、気持ちが全く わからないでもないけれど、人に負担や迷惑をかけてまでの快楽追求はねぇ・・(汗) こういう男の妻となって子どもまでもうけた妻を哀れに思います。 [つむじ] 最近薄くなり始めたつむじのあたりのこと、結婚をせがむ一つ年上の彼女のこと。 頭を痛める将生は、先輩からすすめられた新薬を服用し始めます。しかしその薬を 飲み始めてから急に不能になってしまい、髪の回復ものぞめず、果てには自分が 迫られていたはずの彼女からの衝撃の言葉まで・・・ 切ないお話ですよね。女にとって髪が大事なのが当たり前であるように、 男にとっても同じであるということなのかもしれません。でも最初は結婚について 乗り気でなかったのに、髪が寂しくなったとたんに焦り始めて真面目に考えるように なるなんて、ちょっとバカにしてません?それが男というものだと言われれば そこまでですが(汗) [尻] 高校に進学して寮に入り、違った環境で慣れない生活を送る弘恵はある日、 寮の先輩からお尻が大きいと言われたことがきっかけで度を越えたダイエットを 行うようになります。 なんとコメントしたらいいのかわかりませんが、私もお尻に関しては大きいので(汗) 人からそういわれる機会も少なくないし、ダイエットを敢行したこともあります。 でも度は越えたことがありません。その勇気がないからでしょうか。このお話の 弘恵という少女は、自分が恵まれた環境で育ってきて自分自身にもそこそこの自信が あって、そこにお尻大きい発言できっとプライドのようなものを大きく崩されて しまったんでしょうか。何が彼女をそこまで追い詰めるのかは理解できてもしたくないと 思いますが。 [顎] 親元にいることもできず、中卒で住み込みの仕事を転々とする敦はいつも職場で トラブルを起こしていましたが、先輩にいじめられているとき、洞窟のような目を した男に助けられ、「顎を狙え」といわれます。やがて敦はボクシングを始め、 殺伐とした日々から抜け出すことに成功しますが・・・ お話の流れとしては、最後のところは「洞窟のような目をした男」とは敦自身だったのか と思わせますが、実際はよくわからなかったです。 プロボクサーとなって自立しても、やはり寂しさは少年の頃のまま残っていたと、 そんな単純な解釈をしてしまってもいいものかどうか・・・? ▲タイトル一覧にもどる
カメラマンを生業にしている葉子は40歳。離婚歴があり、現在は離婚後からの恋人で
妻子ある杉浦とつかず離れずの関係を続けている。葉子の両親は既に他界、
一人きりの兄も癌に冒され余命いくばくもない。兄嫁はかつての同級生の志乃であるが
兄の性格故幸福な結婚生活だったとは言い切れず、志乃は常に嘆きを葉子に聞かせていた。
そんなとき、甥の彰彦が大学受験のため上京。姪の理菜のレイプ・妊娠中絶体験を告白する。 それから葉子の身辺では不幸な出来事が立て続けに起こることになる。 乃南さんらしい小説というかなんというのか、ミステリーではないんですね。これも。 この本が現時点(2001年8月)で私が抱えている乃南さんの未読本の中ではラストに なったんですが、なぜこの本を最後に回したのかと聞かれると明確な答えは出ません。 が、あちこちでこの本のレビューなどを読んでいて「暗い」という言葉を目にすると、 自分が落ちている気分のときには読みたくないと思ってしまっていました。 気分が高揚しているときはあまりじっくりと読書をしたいとは思わないので、 ついついこんなに引っ張ってしまったというのが正直なところです。 でも実際に読んでみると、確かにこれを読んで明るく楽しいうきうきした気分になれる 人はいないとは思うのですが、40歳というまだ自分が達していない年齢である葉子の 気持ちに何かしら通じるものを感じるのです。葉子の打算も、甥や姪への愛情も、 兄嫁への女同士としての対抗意識も、それに似たものを きっと自分も近い将来感じることに違いないと。 葉子はこのお話の中で、いろんなことにピリオドを打って新しくスタートを切る ことになりますが、特別な人格者というわけでもないごく普通の人間である彼女の 必死に生きていこうとする姿を応援したいと思いました。 ▲タイトル一覧にもどる
[あなたの匂い]
警視庁起動捜査隊に所属する音道貴子。彼女がばらばらに破いて捨てたはずのはがきが、
貼り合わされた形で再び手元に戻ってきました。そのことがきっかけで貴子は自分の
ごみが誰かに拾われていることに気づきます。やがて連続して起こっていた
幼女の短時間の失踪事件の解決と共に、貴子を悩ませた犯人も明らかになりますが・・・。ごみを拾われて勝手にどんな人物であるかを突き止められるということは、 誰の身にも起こり得ることですが、警察という事件を調べ解決する立場にいるがゆえに 貴子の場合は可哀想でした。事件解決の後に彼女が同僚たちの好奇の目に さらされたことは言うまでもなく。 はがきを拾ったことによって貴子の職業を知り、おせっかいを焼いたり 親しくなろうとしてくる無神経なご近所さんのキャラクターはなかなか微笑ましいもの を感じましたが。 [冬の軋み] ひったくり事件が連続して発生し、その犯人を追う貴子たちが無線を聞いて 駆けつけた暴行事件は、家庭内暴力に悩む家庭の娘やその仲間が自らの父に 暴行を加えたものであった。その娘の特徴から、ひったくり事件の犯人も 同じなのではないかと睨んだ貴子と相棒八十田は・・・? 警察官というのは、常にいろんな周囲の情報から事件解決への糸口をつかんで いかなくちゃいけないのだな、とのん気に感じました。短篇では限界もあったの でしょうが、娘が父親を半殺しの目にあわせるというところまでいくのには どんな理由があったんだろうということが、このお話の本筋からは離れているかも しれないけれどもっと詳細に説明されていたら良かったんではないかなと思います。 [花散る頃の殺人] ひなびたビジネスホテルで発見された老夫婦の死体。口元からあんずの匂いが漂った。 老夫婦の死までの足取りを追う貴子たちは真相をつきとめ、そのあまりに寂しい人生に も幸福な一面はあったのだという結論にたどりつきます。 亡くなった老夫婦の人生にわびしい以外の言葉は見つかりません。 一生をお気楽にのん気に過ごして死んでいく人もいるというのに、他人から見ても 哀れにしかうつらない生き方をするしかなかった人たち。一人で生きるよりは よほど良いのかもしれないと思った貴子の気持ちも理解はできるのですが、 読んで少し落ち込んでしまいそうになったお話でした。 [長夜] 目を開けたまま寝ている女性がいるとの通報で駆けつけ、ビルから転落したらしい 死体を発見すると、それは現在おかまと化した元同僚の安曇の紹介で会ったことのあった 染織家の伊関逸子だった。安曇と共に独自の捜査を始める貴子だが・・・。 亡くなった逸子という女性の、たった一人の男を忘れるための山ほどの恋愛遍歴は、 うらやましくもあり悲しくもあり、また死の引金になったのもその男の死であるという こと・・・そこまで一人の女の人生を翻弄した男にたとえようのない複雑な気持ちを 感じます。 おかまの安曇と貴子の討論も楽しく、人が亡くなって悲しいお話ではありますが、 ラストでは少しやわらかい気持ちになることができました。友情はいいものです。 [茶碗酒] 大晦日の夜に自殺した一家の主の死体の処理。テレビから流れてくる紅白歌合戦の様子。 夜勤のメンバーでの小宴会。滝沢刑事が仮眠をとろうとすると、貴子たちが逮捕した 強盗未遂犯が連行されてくる。久しぶりに会う元相棒に茶碗酒をすすめる滝沢。 と、これだけの短いお話です。六編の中で唯一?滝沢刑事が主人公のようなお話。 本当に短いので感想らしき感想を抱く暇もなく終わってしまうのですが、 彼が貴子のことを憎からず思っていることは伝わります。 [雛の夜] ラブホテルで女性が倒れているという通報を受けるも、捜査員が到着したときには その姿は忽然と消えているという奇妙な事件が連続して起こっていた。 貴子は夜の繁華街で声をかけたある少女とその事件のつながりを偶然につきとめ、 事件解決へと導く。 もう当たり前?になった「援助交際」がキーワードになった作品です。 イマドキの女の子に負けそうになりながらも、なんとかしてちゃんとした 会話を成立させようと奮闘する貴子には、年齢がこちらのほうが近いだけに 応援する気持ちも大きくなりました(笑)この事件に関してはどっちもどっちという 感もありますが・・・時期がくれば少女たちも目がさめるのではないでしょうか? ▲タイトル一覧にもどる
[かくし味]
栄通りの「みの吉」はいつも満員で常連ばかり。「俺」はある日あいていた席に
すわり煮込みを食べてから、常連と化した。やがて常連達が妙な顔色をし、
次々と亡くなっていくのを目の当たりにする。
煮込みのかくし味と彼らの死の原因を探ろうとする「俺」。一応ミステリーだしなぁ、かくし味の真相を知った人が殺されてるっていう オチなのかなぁ・・・などと浅はかなことを考えながら読み進めました。 しかし常連の死の原因の一つに確かにあげられるかもしれない秘密が確かに ありました。同時に店主夫婦の「神仏のおかげ」という言葉もまた 真実だったのだということもわかりました。 [夜明け前の道] 何をやってもうまくいかず、裏目に出てしまうばかりの人生を歩んできたタクシー 運転手の男。いっそこのまま死んでしまおうかと死に場所を探していた彼が、 明け方の道路で拾ったとある客。彼を無事送り届け、死ぬなと願う男。 いつしか男は明日の予定を考えて車を走らせていた。 乃南さんらしい心洗われるお話でした。ありがちといえばそうですが。 死のうにも勇気が出ないままの彼にもう一度生きるほうの勇気を与えてくれた 不法就労の外国人、そしてその仲間達。みんな頑張っているから私も頑張って みてもいいかな、と思える一話。 [夕立] ラッシュの電車の中で定めたターゲットを誘い、痴漢をはたらかせて 警察に突き出し、訴えると脅してお金をまきあげるというやり方で千紗は お小遣いを得ていた。千紗が新しくつかまえた「おじさん」は中学の教頭。 お金を出すのを渋るばかりか、千紗を諭そうとしてきた。千紗は相棒のみどりと 一緒に教頭の勤める中学に出向く。 やらせの痴漢ってやつですね。さすがにこれをした経験は私にはないですが、 まるで経験者であるかのような描写にはどきどきします。相棒のみどりに言いくるめられ、 なんとなくおいしい話だから乗ってしまった、でもやっぱりヤバイじゃん・・・ と良心のお咎めを受けつつも流される千紗。結末は最悪になってしまい、 この後一体どうなったのかが気になるところ。 [福の神] 彼が来ると店が暇になる・・・・というジンクスを持つ客は、典型的な自己中心的な つまらないタイプの男だった。冴子が長年踏ん張ってきた店で、そのつまらない男を やがて福の神と呼ぶようなできごとが起こることになる。 これも、とても心があたたかくなりました。都会を女一人渡り歩いてきました的小説か と思っていたら、冴子が昔別れた子ども達の消息や、自分が一本筋を通してきたものが 正しかったことなどを偶然にも知ることとなり、めでたしめでたしなラストシーン。 そんな偶然は滅多になかろーという夢のないことも感じましたが、 それもまた乃南さんってことでよしとしましょう(?)。 [不発弾] サラリーマンとして妻と娘と息子を養い、そこそこ充実した人生を送っていると 思っていた智明。だが娘は男と外泊し、息子は何度も万引きして警察に補導される。 そんな子ども達に何も言わず夫に対して牙をむく妻。智明は自分がいつまでも 不発弾のままで良いのか自問し始める。 この主人公智明のように、不発弾な日々を送る人は多いと思います。私も形は違えど 今度こそは爆発してやる!と悶々としながら耐えていることを抱える一人であります。 でもやっぱり智明のように「いつか絶対!」と思いつつも何度も不発のまま 地中に埋もれていく可能性もなきにしもあらず・・・とほほ。 ▲タイトル一覧にもどる
※[七つの怖い扉]に収録 突然の事故で両親と妹を失った、母方のいとこのかすみちゃんを 引き取ることになった我が家。最初はいい顔をしていなかった祖母も、 かすみちゃんの健気さに次第に彼女をかわいがるようになった。 お父さんも早く帰ってくるようになった。しかし、ただ一人「かすみちゃんは 薄気味が悪い」と言い近づこうとしなかった兄の身にある日事故が起こる。 「書き下ろしホラー」という主旨のアンソロジーに収録されている短篇なので、 これはいつもの乃南さん色の濃いものとは少し違います。子供を題材にした 子供の無邪気さ恐ろしさというのとも、まあ・・・ちょっと違う・・かな? 最後の2ページくらいで真相が明らかになりますが、ぞぞぞぞ〜〜っという感じ。 子供って純粋な分、念じる力が一つに集中されてすごい力を生み出すんでしょうかね。 言葉で説明するのは難しい話だという気がしますです。 ▲タイトル一覧にもどる
彼女にふられた腹いせで、少しでも人の上に立ちたいと志望した職業は「警察官」。
警察学校の卒業配置で到着した駅前交番で、高木聖大は実にさまざまな人・事件に
遭遇することになる。短気でけんかっ早い聖大は、果たして大丈夫なのか?けっこう厚みのある本なんですけど、いわゆる警察ものでも 音道貴子の登場する機動捜査隊とかそういうのでなく、「お巡りさん」ものなので、 より私たちの身近な視点からのお話で楽しく読みました。 おまけに、聖大は典型的なイマドキの若者というのか・・・かっとするとブレーキが きかなくて、楽なことばかり考えて、いつでも下心を持っていて。 そんな軽い人柄も親近感がわきました。 最後の放火犯の逮捕までに少しばかり時間を 要しすぎかな?と思ったり、聖大ばかりが手柄をあげられずひねくれ気味になっている 時期が長くて、ややうんざりしそうだと思った箇所もありましたが、それは 読後のさわやかな気分で帳消しにしてもらいました。 ▲タイトル一覧にもどる
[4℃の恋]
父方の祖父の死に目にあって、自分の大切な相手との旅行の日程とかぶらないように
過去の恋人を利用する晶世。母もまた友人との旅行、弟は合宿のために。
父が単身赴任で不在なのをいいことに着々と計画を実行しようとする晶世たちでしたが・・・?すごいですね。この一言につきます。普通は考えても実行にはなかなか移せないんでは ないかと思いますが、乃南さんが書くと「いや案外あるかも」と思えてしまうから 不思議です。でも、晶世の立場にあってそれが実現可能な状況にあるのであれば、 もしかしたらやっちゃうのかも・・・?と思ってしまう私も私? [祝辞] 婚約者の摩美の親友・朋子が失語症にかかってしまい、その原因が摩美にあるらしいと 知って淳行はショックを受け、同時にその無言の抗議にうすら寒いものを感じます。 お互いの友人を誘って出かけた旅行のときに朋子は淳行に襲いかかり、 自分を選べとはっきり声を出して訴えます。それがきっかけとなり朋子の失語症は すっかり治ったのですが・・・・ 怖かったです。お話の流れとしては「よくある話」なのでしょうが、 女同士の恨みとかつらみとかいったものの根の深さを見せ付けられた気がします。 朋子は今まで摩美のずるさばかりを見ておつきあいを続けてきたわけではないと 思うのに、何故にこんな結末になってしまったんでしょう。 [青い夜の底で] 「愛してる」という彼の言葉を信じ、学校もやめアルバイト生活をしながら 彼と一緒の生活を続けてきた「私」。歌手という人気商売ゆえになかなか二人の ことをきちんとする機会は訪れず、「私」は焦り始めます。 次第に「私」から逃げようとする彼に「私」がとった手段は?また結末は? 思い込みの激しいファンのストーカーというのがオチなわけですが、これは・・・ 怖いですね〜〜(怖いばっかり言ってますね)。ここまで思い込めるなんて 相当イッちゃっているか純粋かです。コンサートで目が合ったとかなんとかいう 話を聞くたびに「ハイハイ(呆)」と思ってしまう私には到底ありえないお話です。 [髪] 芙沙子の自慢はさらさらで輝くばかりのストレートヘア。毎日のブローとこまめな 美容院通いを欠かさないおかげで、誰もがうらやむ髪を保っています。 ところがある日くせ毛だった同僚の梢子が変身。彼女も芙沙子と同じような 輝くストレートヘアを手に入れ、社内の人気と共に芙沙子の憧れの小宮山の気持ちまで さらっていってしまいます。 女性なら誰もが、自分なんてと謙遜しながらも本当は「自分こそ」と思っている面が あるはずです。いや人間なら誰もがかな?このお話ではそういう部分と、 人を妬んでマイナスモードに陥るあまりほめられない部分など汚い感情がうず巻いて、 半分うんざりという感がなくもないですが、ラストで少しすっきりした自分もまた 同類なのだと実感して、二重に恐ろしくなってしまいました。 [枕香] 恭子と晋平は出会って半年ほどになるカップル。いつもわがままを通し、 晋平に謝らせる形で喧嘩を終え、それはそれで甘く刺激的な関係を続けている つもりでした。しかしだんだんと晋平の仕事が忙しいという理由で連絡が途絶えがちに なり、恭子の焦りは日々大きくなっていきます。 本当は好きで好きでたまらなくて素直になりたいのに、過去の苦い経験で得た 教訓が邪魔をしていつもわがままな態度を通してしまう恭子の気持ちは 痛いほどわかります。枕にしみついた匂いさえも愛しく感じられるなんて、相当です。 でも、だからこそ枕の匂いには敏感だったのでしょう、自分も悪いとわかっていても 裏切られたと知った恭子の悲しみはどんなにか大きいことだろうと思います。 [夜離れ] 就職浪人がきっかけで夜の世界に飛び込んだ比佐子。ちょっとのバイトのつもりが 高収入と居心地の良さでやめられなくなり、気がつけば適齢期に達していました。 このままではまずいと田舎の親のためにもと軌道修正を試みますが、 果たして堅実な人生を歩むことができるのでしょうか? 私は夜の世界に生きたことはなく、お金が溢れるほど入ってくる職業にも 就いたことがないのですが、自分の本能のようなものに反応する世界や 生活から抜け出すことが難しいことは、なんとなく理解ができるように思います。 ラストで比佐子の仲間の一人が「人生なんてそんなものよ。思い通りにならないの」 と言う場面がありますが、当たり前のようなこの言葉が妙に響きます。 ▲タイトル一覧にもどる ▲[ゴーゴー!N'sミステリー]TOPにもどる Copyright 2001-2004 (C)ひろみん All rights reserved. |